【旅と手しごと】ラトビア・リガの街と森の民芸市:クルゼメ地方の手編みミトン
※前回までのおはなしは こちら
ラトビアは、わたしがうさビーと出会ったエストニアのお隣の国。人々が優しくておおらか、他者を尊重して暮らしているところがとても好きです。
エストニア育ちのわたしも、ラトビアに来るのは初めてよ。リガの街は、ユニークなモニュメントがたくさんあるわね。
歴史的文化遺産として記念碑や彫刻がたくさん残っていて、その中で一番好きなのが、自由の記念碑です。リガの街に建つラトビアの象徴で、一般女性がラトビアの主な地方をイメージした星を掲げています。
この像の目線の先を見ると、掲げた星の間から空を見ていることがわかります。ラトビアは、いろんな国から侵略されて、いろんなものを失ってきたけど、私たちの空は誰にも奪うことができないと言ってるんです。侵略された時代には、この像に近づくだけで逮捕されたりもしたらしいです。
ラトビアの人たちにとって、とても大切な、自由の象徴なのね。
そう、この像に会いに来ることがラトビア訪問の大きな目的のひとつ。そして、もうひとつの大きな目的が「森の民芸市」です。
森の民芸市!響きだけで素敵な気持ちになってくるわね。
「森の民芸市」は、森の中で開催される手仕事と歌と踊りのお祭りです。手織りや手編み、陶芸までも、作家さんがその場で作ったりしていて、手仕事好きには超刺激的でたまりません。毎年6月にリガ郊外の広い民族野外博物館の森で開催されています。
民族衣装、ハーブ、カゴ、ミトン・・・わたしたちの大好きなものがたくさん!人ともモノとも、素敵な出会いがありそうね。
作り手さんとお話できるのが良いですよね。
さて、今回ご紹介するのは、森で出会ったチャーミングなおばあちゃまの手編みミトンです。
ラトビアでは、「ラトビアのミトン」という本が出ているくらい、地方によってさまざまな編み方があり、冬が寒いバルトでは欠かせない生活必需品です。代々受け継がれて、この柄はどこどこ地方の柄、とか現地の方が見ると、どこの地方かわかるくらい身近なものなんです。
とっても温かそうだし、ぶどうの葉っぱのくるくるっとした感じや、内側の細かい模様と色の組み合わせにきゅんとくるわね。色使いやモチーフにも意味があるの?
色と柄で意味があって、地域性もあります。ラトビアの神様や月を編みこむ地方もあれば、色で自然を表している地方もあったり、それぞれに特徴があります。このおばあちゃまは、クルゼメ地方の編み方だそうです。
こんなに小さいミトンもあるのね!どうやって編んでいるのかしら?
ものすごく細い針で器用に編んでいました。小さい頃から編み物をされているので、手が覚えているんでしょうね。「編み物マイスター」と言ってとってもすごい方なんですけど、ラトビア語しかお話しないので、お孫さんが英語で通訳してくれました。
おばあちゃまから孫へ、技術も心も受け継がれていくのね。
昔は、嫁入り道具がミトンだったとか。2-3個じゃなくて、大きめの衣装ケースみたいな木の箱にいっぱい持って行って、嫁いだ先で、相手の家族とか来てくださったお客様にお土産として渡したりしたそうです。
印象的なのが、人だけじゃなくてこれから住む家のキッチンや暖炉によろしくねと言って飾っておくという風習があったらしくて。自分でも編むけど、そんなになかなか編み切れなくて、ご近所さんが手伝って編んだりしたそうです。
キッチンや暖炉も、家族と同じように大切にしていくという気持ちの表れなのね。
(次回へつづく)
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